Mirsky-Newmanの定理

有限個の等差数列による整数全体の被覆は被覆系(covering system)と呼ばれており、Erdősをはじめとする多くの数学者により研究されてきた。 例えば \[ 2\mathbb{Z},\ 3\mathbb{Z},\ 4\mathbb{Z}+1,\ 6\mathbb{Z}+5,\ 12\mathbb{Z}+7 \] は被覆系をなす。本記事の主題は被覆系に関する以下の定理である。

定理1 \(n\geq 2\)とする。どの二つも互いに交わらないような被覆系 \[ a_1\mathbb{Z} + b_1,\dots,a_n\mathbb{Z} + b_n \] に対し、公差\(a_1,\dots,a_n\)のうち最大のものは二つ以上存在する。

この定理は1950年にErdősにより予想され、その後すぐにMirskyとNewmanより証明されたが、証明は出版されなかった。 同じ結果は独立にDavenportとRadoによっても得られている。 ここでは私が考えた簡潔な証明を紹介したい。

証明 各々の等差数列に一つの色を割り当てることで、整数全体を\(n\)色に塗り分ける。 \(a_1,\dots,a_n\)の最小公倍数を\(N\)とすると塗り分けは周期\(N\)で繰り返すので、正\(N\)角形の頂点が\(n\)色に塗り分けられているとみなせる。 正\(N\)角形の頂点を\(z^N=1\)の解全体と自然に同一視すると、色\(i\)で塗られた頂点は\(z^{c_i}=\alpha_i\)の解と対応する。 ただし\(c_i=N/a_i\)であり、\(\alpha_i\)は絶対値が\(1\)の複素数である。 よって \[ z^N-1=\prod_{i=1}^n(z^{c_i}-\alpha_i) \] が成り立つ。 \(c_1,\dots,c_n\)の最小値を\(c\)とし、上の式の両辺の\(z^c\)の係数を比較すると、\(c_i=c\)となる\(i\)が二つ以上存在することがわかる。 よって\(a_1,\dots,a_n\)のうち最大のものは二つ以上存在する。